グローバルスタンダードの甲州ワインを目指して。
2025年4月8日(火)よりメルシャン社とヴィーニャ・コンチャ・イ・トロ社の両社が協働してワインを造り合うプロジェクト「パシフィック・リンク・プロジェクト」の第三弾商品となる、「シャトー・メルシャン 甲州 アミシス 2024」が発売しました。今回は開発秘話についてお伝えさせていただきます。

1. 甲州 アミシスとは
当プロジェクトは、「シャトー・メルシャン」とコンチャ・イ・トロ社の造り手が互いのワイナリーを行き来し、日本のお客様はもとより、よりグローバルな視点で「シャトー・メルシャン」の日本ワイン、コンチャ・イ・トロ社のチリワインを交互に造り合います。
今までシャトー・メルシャンでは、1980年代にシュール・リー製法を用いた「甲州 シュール・リー」、2000年代に柑橘系のアロマに注目した「甲州 きいろ香(今年発売20周年を迎えます!)」、甲州の果皮・種の味わいに注目した「甲州 グリ・ド・グリ(オレンジワイン)」など様々なスタイルの甲州ワインを開発してきました。
きいろ香の誕生秘話はこちら
そして、今回のパシフィック・リンク・プロジェクト「甲州 アミシス」では、柑橘系の香り高く、爽やかかつ豊かな酸、ふくよかな味わいのスタイルを目指しました。
私たちは甲州ワインを造るときに“酸”や“香り”にフォーカスしています。この柑橘系の香りや豊かな酸は日本人の味覚や食文化と相性がいいと考えています。一方、アミシスを一緒に造っているコンチャ・イ・トロ社の白ワインの統括責任者であるマックス・ラブ氏からは 「日本人にとってはこのスタイルは合っていると思うが、海外に目を向けた場合、酸が少しシャープに感じる。また、味わいも今より少し複雑にしたほうが海外の人の味覚にも合う。」というアドバイスをいただきました。
2. コンチャ・イ・トロの白ワインのスペシャリストとの共演
昨年発売した「岩出甲州 アミシス 2023」もこのスタイル実現に向けてワイン造りをしましたが、プロジェクトの開始時期の関係もあり、選択できるオプションが限られていました(2023年は、出来上がった甲州ワインの原酒のブレンドと酸を和らげるアプローチを行いました)。「甲州 アミシス 2024」は、マックス氏には2度来日をしていただき、畑の視察、収穫、仕込み(除梗・破砕・圧搾)、そしてブレンドに関与していただきました。

まずは収穫。岩出ヴィンヤードで意見交換をしながら一緒に収穫。甲州の棚仕立てでは身長の高いマックス氏にとっては少し辛そうでしたが予定通り収穫を完了!
次に仕込みをするためにワイナリーへ。海外のワイナリーではユニフォームを着ることはあまりないと思いますが、今回は日本流!ということでユニフォーム、ヘルメット、そして長靴も履いてもらい一緒に作業をしました。圧搾をした果汁も試飲し、こういうスタイルの「甲州 アミシス」を造っていこう、と方向性を確認しました。また翌日には、いくつかの畑も視察し、甲州ブドウへの理解を深めていただきました。


3. 味わいを決めるブレンドワーク
11月には、再来日していただき、ブレンドワークを行いました。
アミシスは両ワイナリーの知見を融合してワイン造りをしていきます。 私たちとしてはきいろ香に代表される甲州ブドウが持つ和柑橘の香りとさわやかな酸味を活かしながら世界の皆さんが受け入れやすいグローバルスタンダードの甲州ワインを目指したいと考えました。
それを実現するために「甲州 アミシス 2024」は3つのキュヴェをブレンドしています。
※岩出甲州 アミシス 2023は岩出ヴィンヤードのみ
- ①区画を厳選し、甲州ブドウらしい“和柑橘”を持つキュヴェ(山梨市岩出ヴィンヤード)
- 香りの豊かさを大切にするため、オリとの接触期間のタイミングを見極めました
- ②収穫時期を最適化し、爽やかかつ豊かな酸味を持つキュヴェ(甲府市玉諸地区)
- きれいな酸味を活かすため、収穫のタイミングを見極めました
- ③エキス分とアルコール度数のバランスを意識した複雑な味わいのキュヴェ(山梨県内)
- 収穫時期を引っ張ることでブドウの熟度が増すとともに酸が穏やかとなり、また味わいに厚みを持たせるため発酵終了のタイミングを見極めました
通常甲州は圧搾率65%をフリーラン果汁、それ以降をプレスワインと呼んでいますが、玉諸甲州きいろ香や岩出甲州キュヴェ・ウエノは圧搾率約55%と通常より10%ほど低く、苦みを出さないようにしています。エキス分とアルコール度数のバランスを意識した複雑な味わいのキュヴェは、玉諸甲州きいろ香や岩出甲州キュヴェ・ウエノより圧搾率を高く設定しています(約65%)。
これらのキュヴェをブレンドすることでよりワインに複雑な香りと厚みを持たせました。
それぞれの特徴が出たシングルヴィンヤードを存分に使用しているワインが「甲州 アミシス 2024」です。
テイスティングコメントは以下です。
輝きのある明るいイエロー。グレープフルーツの果皮やミカン、金柑など柑橘の香り、アカシアを思わせる白い花の香り、白桃の香りなど様々な香りがグラスからあふれる。口中では発酵由来ガスがかすかに感じられ、爽やかな印象を与える。さらに、味わいに厚みが感じられ、アフターを引き締めている。
4. アミシスを通じて
このアミシスを通じて、私たちはグローバルな視点を新たなに持つことができました。
シャトー・メルシャンが甲州ワインの造りにおいて大切にしている和柑橘の香りやきれいな酸をベースに持ちつつ、“味わいの厚み”という視点も融合させたワイン造りに今後も向き合いたいと思います。

是非、「甲州 アミシス 2024」を飲んでいただき、新しいシャトー・メルシャンの甲州ワインのスタイルをお客様にもお届けしていただけると嬉しいです。またグローバルスタンダードな甲州ワインを目指して造ったため海外からのお客様にもおススメいただき、感想を聞かせていただけると嬉しいです。
玉諸甲州 きいろ香や岩出甲州 キュヴェ・ウエノとの比較もぜひ楽しんでみてください!