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メルシャングループ直営ワイン通販WINE&DOORS公式

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セット シャトー・
メルシャン
体験 コラム

誕生から20年。日本ワインを大きく変えた「甲州きいろ香」

日本ワインを語るには欠かせない、日本固有ブドウ品種「甲州」。甲州ブドウから造られるワインは「香りが弱く平坦」「個性がない」のが特徴で、世界と肩を並べる品質になるため、シャトー・メルシャンでは1970年代以降、シュール・リー製法や小樽仕込みなど甲州のポテンシャルを最大限引き出すワイン造りを行ってきました。そのような中、2003年、日本ワインを大きく進化させた出来事がありました。それは甲州ブドウから「柑橘香」を発見したこと。柑橘香に注目した「甲州きいろ香」発売から今年の3月1日で20年を迎えます。当時、研究者として深く関わった、現シャトー・メルシャン ゼネラル・マネージャー小林より、誕生秘話~現在、そして未来に向けた想いをお届けいたします。

シャトー・メルシャン
ゼネラル・マネージャー
小林 弘憲 Hironori Kobayashi
1999年入社。ワイン研究の道に進み、ボルドー大学やオーストラリア他、世界で醸造技術を学ぶ。2003年の仕込み時期に様々な試験醸造を行う中、甲州ブドウから今まで感じることのできなかった柑橘系のアロマを感じるキュヴェを発見。そこから生み出された『甲州きいろ香』のまさに生みの親の一人。2019年椀子ワイナリー長。2023年4月より現職。 栽培から醸造まで一貫したワイン造りを探究する。

1. 柑橘香の発見

メルシャンは長年に渡り甲州ブドウのポテンシャルを引き出すための研究を続けていましたが、柑橘香の発見は「甲州ワイン プロジェクト」がきっかけでした。生食用、ワイン醸造用と幅広く親しまれていた甲州ブドウですが、1990年代後半、巨峰やピオーネなどの食べ応えのあるテーブルグレープの登場や安価な輸入ワインの攻勢で甲州ブドウの生産量は、最盛期の半分ほどに落ち込んでいました。このままでは甲州ブドウがなくなってしまうという危機感があり、「甲州ブドウの文化を守りたい」という想いから「甲州ワイン プロジェクト」が発足しました。当時、甲州ブドウから造られるワインは「香りが弱く平坦」「個性がない」と言われ、それらを解決方法が見つからず途方に暮れていました。そのような中、富永敬俊博士(先生は、ボルドー大学でソーヴィニヨン・ブランを中心にワインの香りを研究されていました)の著書である「きいろの香り」が発刊され、先生が研究されていた柑橘系の香りについて余すことなく書かれていました。先生の本を読み進める中で、漠然とですが香りを引き出すためには、醸造技術だけでなく栽培からのアプローチも必要ではないかということになり、当時工場長であった上野昇さんの畑を実験畑として研究・開発を進めることにしました。この時期は、週の半分をワイナリー(畑)、残りの半分を研究所で過ごしていたことを懐かしく思い出します。

まず、栽培では香りを抑えると言われる銅などの重金属を使わない取り組みを検討しました。つまり、銅が主成分である防除剤(ボルドー液)を使わないこと。そしてブドウの収量を制限することで熟度を上げることに挑戦しました。当時考えたブドウの収量制限は、ブドウの下側半分を取り、上側半分の糖度が上がることを期待しました。この時、取り除いてしまう下側の房を本番(この後収穫する上側の房)で使用する酵母の選抜試験に用いることにしました。この酵母探索を行っていた小仕込み試験の中で1つだけ他とは明らかに香りの異なるキュベがあり、甲州ブドウから感じたことのない「柑橘香」に出会いました。ワイナリー中が「すごい発見だ!」と大興奮した瞬間でした。

酒類研究所 小林弘憲社員(左)とアロマの専門家 ボルドー第二大学 冨永敬俊博士(右)

この栽培と醸造を組み合わせた実験結果に可能性を感じたものの、香りのメカニズムが分からないと商品化もできません。当時の日本にはこの種類の微量なワインの香りを分析できる機関がなく、甲州の可能性が広がる確証が得られない状況でした。そこで、当時の製造課長と日本にいるときに友人であり、きいろの香りの著者でもある富永博士にこのサンプルを送ってみようという話になりました。分析した先生からは、「これは、もっと研究したほうが良いので研究員を送ってはどうか」と言っていただき、成分分析に取り組むこととなりました。うれしい反面、ボルドー大学で行う研究で確実に成果を出さなければ、とかなりのプレッシャーも感じていました。。。。。

2.「甲州きいろ香2004」の誕生(偶然の偶然は、必然 !?)

「来年には商品化するから」とかなりのプレッシャーとともにボルドー大学に送り込まれ、昼夜を問わずボルドー大学で研究を重ねてきました。富永先生は異国の地で苦労と努力を重ねられた深い哲学のある方で、厳しくそして熱く指導頂きました。その結果、ソーヴィニヨン・ブランにも含まれる香と同様の成分の発見、また香り発現メカニズムの一部解明に繋げることが出来ました。

本当に画期的な発見でしたが、香りの発見だけでは商品化できません。そこで、この柑橘系の香りを最大限引き出すために栽培面、醸造面で様々な検討を行いました。ブドウの防除で用いるボルドー液ですが、万能かつ安価な剤であるものの主成分が銅(重金属)であるため、収穫後のブドウに残ってしまうと柑橘系の香りであるチオール類(例えば、3MH*)と結合してしまい、香りを抑制してしまいます。他の高価な防除剤を使うとコストが上がってしまいますが、地元の農家さんも「甲州ワインをもっと美味しくしたい」と新しい甲州ワインを造ることに望みをかけてくださり、ボルドー液の使用を制限してくれました。本当に新しい甲州ワインの誕生に一歩前進したのでした。醸造を行うワイナリーの中でも「甲州ブドウが変わるぞ」と盛り上がり、新しい甲州ワインの商品化に向けて一致団結し、酵母や発行条件の検討、酸化への対策など様々な取り組みを実施し、商品化が見えてきたのでした。
*・・・3mercaptohexan-1-ol

今までになかった「新しい甲州」の発売は決定しましたが、まだ商品の名前も、またどのようなボトルに詰めるのかも決まっていません。新しい甲州は、先生の研究生活とその研究に寄り添っていた愛鳥「きいろ」のことを書いた「きいろの香り」から生まれた、つまりは「きいろ」が運んできてくれた香り・・・・・「甲州きいろ香」に決まりました!もちろん、ラベルには「きいろ」が羽ばたいています。ボトルの選択も今までにない新しい甲州をイメージし、今までボトリングされているボルドー瓶、ブルゴーニュ瓶ではなく、まだ甲州での使用実績がないアルザス瓶を使用することにしました。発売後、「画期的なワイン」と国内外で注目され、約5,000本があっという間に完売。日本ワインの評価が高まり、底上げに貢献できたと強く実感した瞬間でした。

後から考えると「きいろ香」の発見は、防除剤の変更を行っていた、本試験に向けたプレ試験用のブドウ収穫時期であった、いくつもの発酵試験を行っている中で香りのリリース能力の高い酵母の試験区があった、当時の製造課長が富永先生と友人で比較的分析までのハードルが低かった等の偶然が重なった、いわゆる起こるべくして起こった必然であったのかもしれませんね。

3.甲州の多様性

甲州ワインは、1980年代のシュール・リー製法をはじめ様々なスタイルが確立されてきています。オレンジワインのスタイルである「笛吹甲州グリ・ド・グリ」(2019ヴィンテージが歴史と権威のある世界最大級のコンクールである「インターナショナル・ワイン・チャレンジ 2021」にて日本ワイン唯一となる金賞を受賞させていただくとともに、オレンジワインの世界的な産地として有名な“ジョージア”以外の産地が、「オレンジワイン」カテゴリーで金賞を受賞するのは同コンクール史上初の快挙でした)、甲州ブドウで最高峰のアイコンワインを造りたいという想いから生まれた「岩出甲州 オルトゥス」、よりふくよかな果実の風味を生み出すため樽発酵・樽育成に注力した「岩崎甲州」等。ぜひ、これらのタイプの異なる甲州ワインを様々なシーンで飲み比べてみて下さい。

4.甲州の現在、そして未来へ

2022年に甲州ワインの更なる進化に挑戦するため、日本を代表するワイナリー「シャトー・メルシャン」と、チリNo.1※2ワイナリー「コンチャ・イ・トロ」が協働し、造り手が互いの国を行き来し知見を共有して、これまでにない新しいコンセプトのワインを一緒に造り上げるプロジェクト「パシフィック・リンク・プロジェクト」が発足しました。世界と肩を並べる品質で世界に認められる甲州ワインを造ることを目的に、2024年春、第1弾となる「岩出甲州 アミシス 2023」を発売し、販売予定数をすぐに完売するほど話題性の高いワインとなりました。アミシスでは、柑橘系の香りと豊かな酸に加え、海外で好まれるふくよかでリッチな味わいにも注目しました。
2024年の取り組みでは、コンチャ・イ・トロの白ワイン醸造のスペシャリストであるマックス・ワインラブ氏に収穫とブレンドの2度来日頂き、栽培~醸造~ブレンドの工程で様々な挑戦を行いました。その想いと進化が詰まった「甲州 アミシス 2024」を今年の4月8日に発売しますので、ぜひお試しください。
※2 INTELVID-CHILE 2024(販売量)

5.おわりに

2005年3月1日に「甲州きいろ香 2004」を発売して、20年を迎えます。これからもより多くのお客様に甲州きいろ香をはじめ、多くの日本ワインを知っていただき、そして飲んでいただくため、シャトー・メルシャンのヴィジョンである「日本を世界の銘醸地に」の実現に向け、今後も挑戦をし続けます。ぜひ、これからのシャトー・メルシャンにもご期待いただきたいと思います。

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