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メルシャングループ直営ワイン通販WINE&DOORS公式

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セット シャトー・
メルシャン
体験 コラム

ワインとグラスのマリアージュ
~Château Mercian×Riedel 
セミナーレポート~

先日、青山一丁目交差点の青山ツインタワーにあるリーデル青山本店で、シャトー・メルシャンとリーデル社のグラスとのマリア―ジュを体験するイベントが行われました。WINE & DOORSスタッフの黒澤が参加してきましたので、その様子をレポートします。


この日はシャトー・メルシャンのシニア・ワイン・メーカーである田村隆幸氏が、山梨県にあるシャトー・メルシャン勝沼ワイナリーで造るワインから数種選び、そこに日本人初のリーデル社グラス・エデュケーターである庄司大輔氏にそのワインに合うグラスを選んでいただくというスタイルで行われました。2人は過去にもイベントやセミナーでコラボした経験のある旧知の仲ということもあり、また2人の軽妙なトークの掛け合いで、難解なテーマであるにもかかわらず大変楽しいセミナーとなりました。

シャトー・メルシャン シニア・ワイン・メーカー 田村隆幸

田村さんによる勝沼での日本ワイン誕生のお話から会はスタート。1877年から連綿と続く伝統と、そのなかでシャトー・メルシャンが担ってきた役割や、これからのミッションなどについて語られました。興味深かったのはフランス ボルドー格付第一級の「シャトー・マルゴー」の総支配人であった、ポール・ポンタリエ氏とシャトー・メルシャンの関係についてのお話。かつてパリ駐在で赴任していたメルシャンの醸造家のお子さんと、ポールさんのお子さんが現地の学校で同級生だったご縁で、ダメ元でシャトー・メルシャンのコンサルタントを依頼したところ、なんと快諾いただいたとか。そんな偶然による縁もあるものなのですね。

ちなみに、当時、シャトー・メルシャンのワインをテイスティングしたポールさんからは「日本でワイン造りを行うならば、海外の銘醸地のような凝縮感や力強さを求めるべきなのか?日本ならではの良さを目指すべきなのではないか?日本庭園のような、美しい日本の自然をワインを通して表現したらどうか」というお言葉をいただいたのだそうです。まさに日本ならではの『見立て』の文化をポールさんは理解されていたということですね。さすがは伝説のシャトー・マルゴーの総支配人、恐るべし。

リーデル社 シニア グラス・エデュケーター 庄司大輔氏

さて、当日合せたワインとグラスを紹介していきましょう。
全部で4種類のワインとグラスのマリアージュを体験できました。

【1】シャトー・メルシャン 岩出甲州 きいろ香 キュヴェ・ウエノ2022 × リーデル ヴェリタス 甲州

《ワイン》山梨市岩出ヴィンヤード産甲州種100%。メルシャンの元勝沼ワイナリー長 上野さんの畑のブドウで造るワイン。
岩出ヴィンヤードは海抜400mの火成岩土壌が川の流れによって削られた水捌けのよい土壌で、近所には大岩神社という名の神社があるほど岩や大きな石がゴロゴロと土中から出てくるので、『岩出』と名付けられたそうです。(現在は岩手という地区名)
上野さんの畑は断崖絶壁の上にあり、水捌けが素晴らしく、すぐ西側に山があるので西日が当たらないため、酸がよく残るのだそう。棚仕立てで、風がよく通り抜けるのもこの畑の特徴とのことです。
《グラス》2017年、リーデル社の11代目当主マキシミリアン・リーデル氏が、22軒のワイナリーとともに、12種類のワインをテイスティングし甲州種に最適なグラスを選び出す『甲州ワークショップ』によって選びだされた、まさに甲州種を楽しむためだけに生み出されたグラス。

このグラスでテイスティングすると、青柚子・夏ミカンなどの柑橘の皮を剥いた瞬間のフレッシュさ、若干の苦みとシャープで伸びのある酸を感じることができます。口中ではさらにフレッシュさが増し、薄く淡い、やや緑がかった印象そのまま。庄司さんによると、「このグラスは元々シャンパーニュ向けのグラスで、ボウルの口が細いので舌の先端から奥まで順にワインは滑っていく。そのため香り・味わい・酸味すべての要素を余すところなく、バランスよく感じられます。このグラスだと、ワインの持つ和柑橘のさわやかさ、ほろ苦さをよく感じられますね」とのこと。

庄司さんからの提案で、より大きな赤ワイン用のボルドーグラスに移してワインを味わいましたが、口径の大きなグラスでは、ワインは舌の上で横に広く乗ってしまい、ピントが合わない印象に。味わいも酸っぱく、苦く感じるようになってしまいました。「大きいグラスの方がワインは美味しくなる」という都市伝説が全てのワインに当てはまらないことを体験。ちなみに、そのまま元の甲州グラスにワインを戻すと、より空気に触れ、少し温度の上がったワインの味わいは、より甘酸っぱく、キュッとした酸味が実に心地よく感じられました。

ここで田村さんから、『きいろ香』の誕生秘話が披露されたのですが、それも実に面白い内容でした。
『きいろ香』は甲州種が持つ柑橘の香りを初めて引き出したワイン。
かつて山梨県内では1.5万トンも生産されていた甲州種は、第6次ワインブーム(空前の赤ワインブーム)を経た2000年頃には約3,000トンまで減少していました。「このままでは甲州種の伝統が途絶えてしまう!」と危機感を感じ、シャトー・メルシャンでは甲州種の研究を強化。より香りの強いブドウを得るために、房の下半分を捨て、より甘く香りの強い上半分だけを使うという実験を行っていました。

その実験の傍ら、捨てられる下半分のブドウは、別のシュール・リーという醸造方法の研究用に20種類のさまざまな酵母を用いて発酵させていました。そのうちの一つから、これまでの甲州ワインから感じたことのない香りがしたのだそう。この新しい香りのワインを、現在のシャトー・メルシャンのゼネラル・マネージャーである小林が背負い、ボルドー大学でソーヴィニヨン・ブランの香りの研究をしていた富永敬俊教授の元に持ち込みました。当時日本では分析できなかったその香りは、3MHという香りの前駆体によるもので、このワインには、ソーヴィニヨン・ブランのワインと同等レベルの量が含まれていたということがわかりました。
こうして見つけられた3MHをよりよくワインの中に表現するための研究を重ね、栽培から醸造まで革新的な方法を開発し、さわやかでキレのよい、新しいタイプの甲州ワイン『きいろ香』が発表されたのだそうです。

【2】シャトー・メルシャン 笛吹 甲州 グリ・ド・グリ2022 × リーデル ヴェリタス 甲州

《ワイン》甲州種100%。ブドウは甲州市・山梨市・笛吹市などを北東から南西に流れる笛吹川の両岸、さまざまな地形・土壌の畑で収穫されたものを使用。淡いピンク色の甲州種を果皮ごと浸漬し、かもし発酵を行っています。赤ワインと同様の発酵法の、いわゆる『オレンジワイン』です。同じ甲州種100%のワインですが、『きいろ香』とは全く違うスタイルのワインです。造り方もかなり異なり、『きいろ香』がフリーランジュースのみを使用し、ステンレスタンク発酵・熟成で、徹底して酸素との接触を避けるのに比べ、『グリ・ド・グリ』は全粒を使用(梗は使用しない)、木桶発酵・一部オーク樽熟成、より酸化的なプロセスで造られるため柔らかな酒質で若干の熱を感じるスタイルです。
《グラス》 『きいろ香』と同じ甲州用グラスを使用

庄司さんはワインをテイスティングしながら、「バラの香りが強く感じられますが、以前INAOグラスで試飲した際には焼リンゴのようなニュアンスが強かった記憶がありますね。グラスの口径が小さいと、香りの成分が密に感じられるので、より集中した香りや味わいになる。」とコメント。「このワインは、初期よりエレガントなスタイルになってない?」と質問をされました。田村さんによると、『グリ・ド・グリ』は2002年に初めて造りだしてから毎年造りを変えていろいろ試しているワインで、2017年頃からは彼が勝沼ワイナリーの仕込統括を任され、エレガントなスタイルに寄せていっているとのこと。果皮の浸漬時間を長くすると抽出はどんどん強くなるが、3週間を過ぎるとまたエレガントになるため、途中で果皮を分離させるとむしろ荒々しいスタイルになるのだそうです。さらに続けて、「グリ・ド・グリはオレンジワインって言っていいんですか?」という質問には、「開発当時、日本にはオレンジワインなんて言葉は無かった。グリブドウは黒ブドウと白ブドウの間のピンクのブドウで、灰色=フランス語で『グリ』色のブドウから造ったグリのワインということで、グリ・ド・グリという名前になった。今でいうまさにオレンジワインですね。」と答えていました。日本ワインの発展を目指し、他のワイナリーにも分け隔てなく多くの技術を開発・公開してきたシャトー・メルシャンが実は、日本ワインにおけるオレンジワインのパイオニアでもあったとは、これにもセミナーに参加されていた多くの皆さんは関心していました。

【3】シャトー・メルシャン 穂阪マスカット・ベーリーA 2019 × リーデル ヴェリタス ニューワールド ピノ・ノワール

《ワイン》山梨県北西部、韮崎市の北東の山麓地域にある穂坂地区は山梨県を代表する醸造用ブドウの産地として近年人気が高まっているエリア。標高が高く日照時間が長く、また風がよく吹き抜け水捌けのよい土壌です。その穂坂地区で栽培されたマスカット・ベーリーAを使用して造られています。マスカット・ベーリーAの特徴であるイチゴキャンディの香り(フラネオール)は強くなく、むしろ黒系の果実を感じることができるほど締まったニュアンスも感じられます。
《グラス》リーデル社では公式にロゼ・シャンパーニュグラスとしても認めているグラス。ボウルが大きく膨らみがあり液面とグラスの口までの距離が遠いため、テイスティングする際には必ず顎を上げて飲まなければならないですが、そうすることで舌の奥にもしっかりと味わえます。

シャンパーニュだったら泡もしっかりと感じられるこのグラスで味わうと、マスカット・ベーリーAの持つ果実味や酸、それほど強くないはずのタンニンが舌の先端付近に残り複雑に感じられました。

ここで田村さんからマスカット・ベーリーAの面白い話が聞けました。
マスカット・ベーリーAはとてもタンニン(渋み)が少ないワインになりがちですが、実は種には他のブドウと同じくらいのタンニンを含んでいるそうです。しかし、このブドウの種の周りはコーティングされており、普通に醸造するとタンニンは抽出されづらいのでマスカット・ベーリーAは渋みの少ない味わいのものが多いとのこと。もし種を潰すことができて、種からのタンニンをしっかり得ることができれば、しっかりとしたタンニンを含んだワインになるのだそう。某雑学番組でしたら95へぇは叩き出しそうなトリビア。面白いですね。

このワインもボルドーグラスに移して試してみましたが、渋みやエグみが引き出されてしまいました。お料理が力強く濃い味付けならば合せられるかもしれませんが、ワイン単体ではギシギシとした印象になってしまいました。グラス選びって重要ですね。

【4】シャトー・メルシャン 鴨居寺シラー 2019 × リーデル ヴェリタス オールドワールド シラー

《ワイン》鴨居寺ヴィンヤードは山梨県山梨市の重川と笛吹川に挟まれた平地で標高も低い(340m)エリア。北緯35度、砂の多い多い土壌で地下100mほどまでほぼ砂質のため水捌けがよく、土中の水分量が極めて低いというのが特徴です。この畑で造られたシラーは香りには黒コショウを感じます。シャトー・メルシャンでは長野県上田市の椀子ワイナリーで造られるシラーが非常に有名ですが、あちらは標高650m、北緯36度、午後には毎日風が吹く畑で保水力が高く強粘土土壌で造られたシラーです。香りには白コショウや山椒が香るのが特徴となっており、また違った味わいを楽しめます。

《グラス》リーデル社10代目のゲオルグ・リーデルがバカンスにどうしても1つだけしかグラスを持っていけないとしたら、このグラスを持っていく!と答えたという万能グラス。長く大きなボウルで果実味やスパイスも存分に感じられ、深みや凝縮感のある香りをもつフルボディの赤ワインには最適。赤ワインのグラスに迷ったらコチラを試していただきたい!

鴨居寺シラーは、色調はけっして濃くなく、みずみずしくクリアな印象。海外のシラー(シラーズ)のように高アルコールで凝縮度が高く、若いとブラックオリーヴのようなオイリーさだったり、苦みがあるようなスタイルとは全く違う、世界中でも例を見ないスタイルだと感じました。実に面白いワインで、エレガントなスタイルなので日本料理にも十分合わせられそうなスタイル。特にこのグラスだと、しっかりと果実味や複雑味が引き出され、何層にも複雑に感じることができたので、醤油麹を使った焼き物や、魚や肉の杉板焼き、和牛のしゃぶしゃぶなどにも良さそう。お料理に寄り添ってくれるシラーですね。書いていたらなんだかお腹が空いていてきました(笑)。


お2人の掛け合いから、どんどん話は膨らんでいき、ただでさえ美味しいワインが、適切なグラスを選ぶことで、味わいも香りも何倍にも美味しく、そして興味深く感じられました。ワインとグラスのマリアージュ、まさに1+1が2にも3にもなる無限の広がりを感じることができ、参加者の舌と知性をくすぐってくれた、そんな体験ができました。
是非皆様も、グラスを変えることでワインをさらに楽しむという体験を味わってみていただけると嬉しいです。

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