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【EWM安蔵光弘の視点】
第一回テロワールについて

皆様こんにちは。メルシャン(株)エグゼクティブ・ワインメーカーの安蔵(あんぞう)です。今回よりWINE&DOORS内で「EWM安蔵光弘の視点」というコラムを何度かに分けて、皆様にお届けしようと思います。第一回は、「テロワール」という言葉についてです。

メルシャン エグゼクティブ・ワインメーカー 安蔵光弘
2001年から4年間、フランスボルドーのシャトー・レイソンに駐在、同時にボルドー大学醸造学部に在籍しDUAD(ワインテイスティング適正資格)を取得。帰国後はシャトー・メルシャン品質管理課長、本社品質管理部長を歴任。15年4月からシャトー・メルシャン チーフ・ワインメーカー、20年4月よりシャトー・メルシャン ゼネラル・マネージャー(22年3月までチーフ・ワインメーカー兼任)に就任。23年4月よりメルシャン エグゼクティブ・ワインメーカー。20年6月~23年6月まで、山梨県ワイン酒造組合会長。ボルドーでの知見と、海外ワイナリーと品質改善に取り組んだ経験を生かし、日本ワインの未来とメルシャンブランドの発展に注力する。

ワインというお酒は、「ボルドー」、「チリ」、「山梨」、「桔梗ヶ原」などのように、地名が商品の重要な要素になっています。ブドウの産地によって、ワインの味わいの個性が生まれるためです。一般に、より狭い地域が表示されているワインの方が、個性がはっきりしたワインになるといわれます。ネット販売のサイトなどで、ワインの紹介文に「@@というブドウ産地のテロワールの味わいを表現した・・・」のような文章をしばしば見かけます。テロワールはフランス語で、Terroirと書きます。フランス語には、似た言葉として、Terre(テール、土、土壌、地球)や、Territoire(テリトワール、領土)があります。

オー・メドック(フランス、ボルドー)のブドウ畑

日本語にも英語にも、テロワールとぴったり一致する言葉はありませんが、日本語で近いのは「風土」という単語です。「風土」を辞書で引くと、『① その土地の気候・地味・地勢などのありさま。②人間の文化の形成などに影響を及ぼす精神的な環境。例)「組織風土」、「政治風土」』と説明されています。

Terroirをフランス語の辞書(仏仏辞典)で引くと、『①その地域の住民に影響を与える地域性、②ある地方で特徴のある農産物を生み出す大地・地域の総体』とあります。ワインで使われるニュアンスは②の方ですが、①の方の例文としては、「テロワールの訛り」、「テロワールの詩人」が上がっています。「育った地域で先祖から受け継ぎ、その地域の人々の精神構造に染みついたもの」といえます。

②の方にある、「・・・大地・地域の総体」という言葉に注目してみます。どうしてもワインでテロワールというと、土壌や水はけ、日照量、降水量などを連想しますが、仏仏辞典の定義では「その大地・地域の総体」ということですので、「その地域の住人」、「地域住民の気質」なども含む言葉です。

シャトーヌフ・デュ・パプ(フランス、ローヌ地方南部)のブドウ畑

日本には「あいづ(会津)っぽ」という言葉があります。会津の人の一徹さ、頑固さ、一度決めたら揺るがない、といった気質を表します。地域の住民たちや、ブドウを栽培する人たちの気質もテロワールの一部で、ワインの味わいに影響があるということです。

城の平ヴィンヤード(山梨県甲州市勝沼)

こう見てくると、「テロワール」は「風土」と似てはいますが、少し違ったニュアンスを持つことがわかります。日本ワインは、日本のテロワールではぐくまれ、フランスワインは、フランスのテロワールから生まれます。テロワールという言葉の中に、その地域で暮らす人間の要素が入っていると意識すると、ワインの個性がより明確に感じられると思います。さまざまなブドウ産地のワインを飲み、その地域のテロワールを感じることで、ワインの楽しさが広がると思います。

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